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2012年3月12日 (月)

「土用波」

中島みゆきがノリノリで楽しそうに歌っているので、それだけで特に言うことも無くなってしまうのですが、まさに土用波の勢いで全てを攫っていく、何もかも忘れていく、そして何事かが始まっていく予感をもはらんだ、喜びの歌でもあるような気がします。

「愛に全てをさらわれてゆく」という言葉が全てで、言ってしまえばただそれだけを歌っているようにも思えます。なつかしい名前も、折れたカイトも、伝えそこねた言葉をも、それを忘れたいと望もうが、忘れたくないと願おうが、たった今、愛が全てを含めて、全てを流していく、そんな激情の歌であるかと思います。
「流れゆけ流れてしまえ立ち停まる者たちよ 流れゆけ流れてしまえ根こそぎの土用波」という詞も、みんな流れてしまえ、というそのままの意味でも無論あるとは思いますが、もう一度新しく何かを始めたい、とにかく今愛が渦巻いていてじっとはしていられない、じっとしていることを許さない、そんな気持ちが込められている気がします。

この歌もそうですが、「いまのきもち」ではどの曲も楽しんで歌われている印象で、二度目(以上)のレコーディングで完成度がより高まった、というよりはアルバムタイトルの文字通り、中島みゆきの生の気持ちが伝わってくる、そんなアルバムであるように思いました。

2012年3月 4日 (日)

「どこにいても」

ゆっくりと切々と、「あなた」への泣きたくなるような想いを歌っていきますが、慎ましやかなような、とんでもなく粘着質なような、どこまでいっても途切れることのない気持ちと悲しみが続き、個人的な中島みゆきの歌のイメージにぴたり合った曲です。

中島みゆきの歌には慎ましさと厚かましさがよく同居している、と言うより表裏のように引き剥がせないペアとして存在している気がします。
この気持ちはきっと迷惑だろうと思う慎ましさと、そう知りつつ気持ちを捨てられない厚かましさ、と言って開き直って好きですとは言えない慎ましさに、迷惑だとはっきり言われない限りは続けてもいいという厚かましさ、そういう未練のループが「それだけでも それだけでも 迷惑と言われたら 終わりだけど」という詞に表れていると思います。噂に聞くだけでいい、それだけでいい、と言いつつ「終わりだけど」の「だけど」に延々と続く苦悩と葛藤が表れているように思います。

この曲もこのブログで記事にするのは初めての曲ですが、何だか初めて聴いた気がしないのは、最初に書いたように中島みゆきの歌の切なさ、美しさいう上澄みの部分と、未練、執着という渋味の部分がよく調和した、ある意味で典型的で完成度の高い曲だからかもしれません。

2012年2月26日 (日)

「はじめまして」

爽やかなホーンの音とは裏腹に決して手放しで未来を、明日を賞賛しているわけではないのですが、それでも明日を捨てない、明日は良い日であると信じたい、という渇望のような希望に溢れる曲だと思います。

やはり「はじめまして 明日」という言葉に全てが凝集されているようで、何度も出会ってきたはずの明日、けど一度もつきあったのことのない明日に、「はじめまして」と今出会ったような気持ちではじめたい、何をはじめるのかはよく解りませんが、今来た道を忘れててでも、悲しい人を忘れてしまっても、とにかく今はじめましてなんだ、という思いが伝わってくるような気がします。
辛い過去、悲しい過去、そういうものばかりに囚われて明日を見れない自分を叱咤し、新しい気持ちで明日を迎えに行く、そんな前向きな歌でもあると思います。

結構渋めというか、ダークな曲が選曲されているような気もする「いまのきもち」の中でも一際爽やかで、アルバム「はじめまして」で初出した時も、「いまのきもち」のこの曲でも、いつ聴いてもフレッシュな感がある、タイトルに相応しい曲だと思います。

2012年2月19日 (日)

「この世に二人だけ」

この曲もひどい落ち込み方で、この世に二人だけというよりも、この世に一人だけであることを嘆いているような感じです。どうしようもない現実の前で空想にふけっているような印象もあります。

「二人だけ この世に残し 死に絶えてしまえばいいと」というフレーズが印象的、を通り越して言い過ぎ、思いつめ過ぎで危険な香りがしますが、一方で「心ならずも」という自制の気持ちも働くようで、しかしそれがますます悲しみを増しているような気がします。
果たして「心ならずも」が本意でないという意味なのか、むしろ心そのものではないか、本心を必死で隠して、そんなこと思うはずがない、と必死で打ち消しているような印象があります。「心ならずも」はむしろ心が理性に反して、暴走してという意味に近いのではないかと思います。
そして、「それでもあなたは 私を選ばない」というのは、例えこの世で二人だけでもあなたは私を選ばないだろう、という解釈も勿論ありだと思いますが、筆者はどちらかというと、私がこれほど葛藤してこれほ苦しんでいるにも関わらず、あなたは全く私に興味を示さないという嘆き、どれだけ辛い思いをしても、どれだけあなたを想っても、まるで一人遊びをしているかのようだ、と虚しい気持ちを表しているように思います。

既に負けが確定している、どうあがいても手が届かない、そんな状況でふと芽生えた空想と葛藤、切なさと虚しさ、そんな瞬間の心の動きを捉えた曲なのだと思いました。

2012年2月12日 (日)

「横恋慕」

この曲聴いたことあったっけ?と、思ったのですが、どうやらこのブログでは初めて取り上げる曲のようです。それはともかく美しいメロディに切ない歌詞、そしてそこはかとない不気味さ、嫉妬と執念。現実にこんな人いたら迷惑だな、と思いつつ胸がすくような、詰まるような、純然とした愛と悲しみがある曲だと思います。

「好きです あなた」という、一度いうわと言いつつ三回も繰り返される台詞が、シチュエーションはともかく、こんな素直でストレートな言葉が今まであっただろうか、と小さく感動しました。
以下想像ですが、この言葉を言いたい、言いたくない、という狭間で揺れる心境を描いた曲であるように思えます。「私の思いを 伝えてから 消えたい」という詞から察するに、「好きです」とはこの言葉を言わずには消えられない、せめて一矢報いたい、という執着の言葉でありますが、同時にこれを言ったら終わりという決別の言葉であると思います。何度も繰り返される「好きです あなた」は本当に言うのか、本当に言ってしまっていいのか、という逡巡を表しているように思いました。

囁くような可愛い歌声の部分と、より深く成熟した声で歌う部分と、二つ意識して使い分けられていると思います。時の流れ、という言葉が歌中でも出てきますが、かつて言えなかった秘めた気持ちを、今も心のどこかに秘めつつ、時の流れの中で回想する、そんな歌なのかもしれません。

2012年2月 5日 (日)

「傾斜」

何かおどろおどろしい導入部から、年をとっていいことなど一つもなさそうな語りの後、突然「としをとるのはステキなことです そうじゃないですか」と陽気に言い放つ、その断絶に狂気と理不尽を感じる、ある種攻撃的で皮肉なイメージの曲……だったのですが、「今の気持ち」では少ししっとりしている印象で、より老婆に同情的になっているような、邪推するなら中島みゆき自身年をとって心境が変わったのではないか、と思わせる歌い方になっていると思います。

と、いう上記の印象が全てで、以下蛇足というか筆者の私見なのですが、「傾斜10度の坂道を 腰の曲がった老婆が 少しづつのぼっていく」という心象風景がこの歌の全ての始まりであるような気がします。
そのイメージを出発点として、その老婆が抱えている荷物は何だろうかとか、何故坂道を登っているのだろうかなど、あれこれイメージしていくうちに老婆の半生、悲哀が見えてきてしまって、深刻な同情を感じた時、思わず口走ってしまったのが「としをとるのは……」という言葉で、後に続く「忘れるよりほかないじゃありませんか」からも汲めるように、どうしようもない悲しみに対する開き直り、せめてもの慰めの言葉であるような気がします。
そう解釈すると、この歌は一般的な老いに対するアンチテーゼではなくて、自分の心の風景に棲む老婆に対する語りかけの歌であり、非常に私的な心情を歌った曲であるように思います。

また深読みかもしれませんが、或いは「寒水魚」の時は心の中の陰気な老婆を追い出そうとしていたのが、「今の気持ち」では寄り添うように、より近しい存在として坂を登る老婆を見守っているような気がします。

2012年1月29日 (日)

「歌姫」

やっぱり中島みゆきの歌は打ちひしがれている人のためにあるんだろうなあ、と思わせるくらい淋しさと美しさに溢れた曲で、海と風にスカートの裾を翻す歌姫の姿が見えるような、消えいくような、嫋々とした余韻のある曲です。

美しい旋律と歌声だけで満足なので、細かい歌詞の解釈は比較的どうでもいいことですが、歌詞を見直すと「遠ざかる誰のためにふりかざせばいい」という部分が気になりました。
単に「誰のためにふりかざせばいい」ならばそのままで、誰のためにするのかわからない、という意味だと思いますが、「遠ざかる誰か」となると、「誰か」が特定されてしまうわけで、後ろの「誰のためにふりかざせばいい」と矛盾する表現になっていると思います。
おそらくこれは「誰かが遠ざかる」+「誰のためにふりかざせばいい」を1つのフレーズに纏めた言葉で、誰かのためにふりかざそうとしたのに、その誰かが遠ざかってしまったので誰のための行動かわからなくなってしまった、というニュアンスなのではないか、と思います。
いい加減なことを書くと怒られそうですが、この頃の中島みゆきはこのような一種のダブルミーニングというか、聴くと一瞬「?」となる複雑なフレーズが多かったような気がします。しかし、それ故に受け取り方によって様々な情景を思い浮かべることができたのではないかと思います。「いまのきもち」で、中島みゆきがどんなニュアンスで歌っているか、想像してみるのも楽しいと思います。

歌姫がどんな人物なのかも描かれていないので、十人十色の歌姫のイメージが膨らむのではないかと思います。歌姫とは安酒を売る酒場にいる流しの歌手なのか、港にたたずんで一人歌う女性なのか、或いは遠ざかる船のデッキに見えた幻なのか、それとも主人公そのもののことなのか、それぞれの歌姫の歌が聞こえてくる歌だと思います。

2012年1月22日 (日)

「あわせ鏡」

酒を飲んでひとりごちるように、破滅的とまでは言わないまでも自堕落で無気力な雰囲気漂う曲で、内容も言ってしまえば愚にもつかないたわ言、愚痴の繰り返しであって、およそ前向きさとか希望というものは見えてきません。それでいて奇妙に飄げたリズムとメロディで、一種の滑稽さがあり、笑えない喜劇を見ているようです。

と、上のようにまとめると非難しているようですが、筆者はこの歌は良い、と思うわけで、どういう希望も明示されないに関わらず、聞くと不思議と救われた気分になります。
思うに歌に無理矢理な前向きさや建設的意見など不要で、ただただ打ちのめされて、落ち込む、その悲しみ、虚しさ、情けなさ、そんなものたちが旋律になり中島みゆきの口から紡ぎ出されるのが歌であって、理屈というよりはもっと原始の感情の部分で心を揺さぶられるのだと思います。

独り言のような詞ではありますが、激しくかまって欲しい、孤独に堪えられない、という感が出ている曲でもある思います。そういう依存心と言うか、べったりともたれかかるような情けの深さが魅力的な歌なのかもしれません。ネガティブながらも情けと慰めに溢れた、人間らしい歌なのだと思います。

2012年1月16日 (月)

「この空を飛べたら」

「人は 昔々 鳥だったのかもしれないね」「こんなにも こんなにも 空が恋しい」というサビが印象的な歌で、そればかりが印象に残るのですが、歌詞を振り返ってみると、冷たい現実と未練が切々と語られていて、むしろ地上に縛られて生きるしかない生き物への哀歌のように感じます。

空を飛びたいという願望は、或いは無邪気な夢であって、一般的にはもっと明るく楽しく自由なイメージであるかと思うのですが、この歌においては空を飛ぶなんて「悲しい話」であり、さらに「飛べる筈ない」と断言していることもあり、どちらかと言えば冷たい現実と対比し、未練と悲しみをより際立たせる、引き立て役として描かれているような感があります。
また、「この空を飛べたら消えた何もかもが 帰ってくるようで 走るよ」という詞が、さりげない決意を表しており、ひたすら空を見上げて溜息をつく曲ではなく、地上を走る、という覚悟を示した曲なのではないかと思います。

こんなにも空が恋しい、と悲しみの真っ只中に居ながらも、それでも徐々に吹っ切ろうとしている、そんな情景の歌のように思いました。

2012年1月 8日 (日)

「信じ難いもの」

騙されていると思いつつも、ついつい信じてみたくなってしまう、そういう惚れた側の弱み、寂しがりやの習性を「信じ難いもの」とまとめあげて、半ばヤケ気味に吐き出す、そんな印象の曲でしたが、改めて聴くと、愛の言葉なり誘い言葉なりをとにかくも受けているからこその「信じ難いもの」あって、その高揚感といやいや信じちゃいかんという葛藤の、つまり一種惚気の歌ではないか、という気もしてきました。

歌詞を見ると「信じ難いもの:愛の言葉 誘い言葉」と書いてあります。以下、強引な解釈ですが、「:」は書き言葉であって、例えばものを分類するときに区切りの記号として使うものです。この歌でも主人公が「信じ難いもの」を書き出して反芻して、「騙されないぞ」と冷静になろうとしている、そんな風情が浮かび上がります。
また、「嘘つきはどちら 逃げること戻ること」、「嘘つきはどちら 泣き虫忘れんぼう」という詞は一度は別れた(振られた)元恋人からよりを戻そうと言われている状況を想像させます。
以上から、元彼に言い寄られてぐらぐら来ている様子を描いている曲ではないか、という気がしています。

結局のところ、信じ難いものを信じたいというのが本音であって、ひとしきり疑念を吐いた後は突き進むんだろうな、と、そういう前夜祭のような心の高揚と葛藤、そして決意をする一歩手前の心情を歌った曲なのだと思います。

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