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2010年9月26日 (日)

「4.2.3.」

ある出来事を軸にした私の心情、独白のような言葉が切々と綴られ続け、さながら私小説のように私の内面を語っていると思いますが、その出来事が個人的な経験というよりも社会的事件であり、人間の集団としての性質や心理の問題をはらんでいるために、社会批判の歌のようにも聞こえます。いずれにせよ、非常に重苦しい音楽で、TVを通して見た光景に対する吐き気を催すような違和感が語られていると思います。

歌詞に出てくる事実だけを総合すると、日本人救出のために死傷した兵士が報道で殆ど取り扱われてなかった、というだけであり、それだけで日本が冷たい、と結論付けるのは狭きに失しているというか、無理にひねくれた解釈で事々しく露悪的な見方をしている、ような感もあります。
が、おそらくこの歌は事件に対する総合的な解釈というよりは、その光景を見た瞬間に感じた違和感、蜂の巣をつついたような騒ぎの中、熱に浮かされたように人質の無事を喜ぶ報道とその陰で重傷を負って担架で運び出される兵士、そういう激しいコントラストの中で、これほど悲惨な事実があるのに何かお祭りが行われているかのような、そして祭りが終われば何事もなかったかのようになるような、そんな浮かれた光景に激しく嫌悪を抱いるように思います。
おそらく日本が主題として扱われているのは歌のモデルとなった事件がそうだったからというだけであって、多分どの国でも同じような現象は起こりうるのではないか、そういう意味では日本的社会を批判するのではなくて、人間集団の根本的な利己的性質を冷めた眼で見ている曲だと思います。

「慌てた時に 人は正体を顕すね」という平凡な一言がそんな人間の性質を冷たく射抜いているようで、同時に冷たくなりすぎている私の心理を表しているように思います。
筆者が思うにこの歌は「世情」と同じように、熱くなっている世間と、それに対して凍りついた私の心、そんな意識の断層、違和感を描いた曲なのだと思います。

2010年9月19日 (日)

「紅灯の海」

紅灯の海と言って、それが本当の海のことなのか、歓楽街に漂う己の身のことを言っているのか、おそらく後者だろうと思いつつ、この漂泊感、昨日も明日もわからなくなっているような浮揚感と不安感、真暗闇で光と言えば灯台しか見えず、身の落ち着く所が無い、そんな感じが海そのものを歌っているようで、聴く者に幻のような「紅灯の海」を見せてくれる歌だと思います。

一歩引いてみれば、やはり繁華街で泣き上戸の酔っ払いが独り虚しがっているような情景にも見えてきますが、多分彼(彼女)にとって紅灯の海は優しくはないはずで、或いは幻の優しさであって、そうやって幻の優しさにのめりこまなければやっていけないのではないか、と想像します。
そもそも紅灯の海という言葉が造語というか喩え話であって、それに対して「海と名の付くものは優しい」というのはかなり後付けかつ強引な展開で、その辺りは言葉の遊び、とは思えない程の切実な思いが篭っているようで、彼の置かれている世の理不尽さと虚しさが垣間見えるような気がします。

とても暗く、そこに置かれた光も優しさも幻のようで、やるせない歌だと思いますが、それだけに一種の酩酊感、幻の美しさを感じさせる曲でもあると思います。紅灯の海に傷つく者への慰めの歌ではないかと思いました。

2010年9月12日 (日)

「木曜の夜」

逆ストーカー願望というか、妄想先行型とでもいうか、木曜の夜という確かにあきらめるには早すぎるような、かといって何かを期待するには遅すぎるような、そんな微妙な時間に絶望と希望を抱いて街中を徘徊する、そんなちょっと危ない人を意外にポップな曲調で表現していると思います。

無論、事実として徘徊しているというわけではなくて、そういう心情を表現しているのだと思いますが、この自意識過剰な気持ち、ありえない出会いを求めて人ごみの中で勝手に失望している感じは、筆者も身に覚えがあるような、そして多分誰もがそういう時期を経験していて、今なお捨てきれない青くて幼い心情である気がきます。
と、思って聴いてみれば、早口で字余りで少し子供のような感じを出している歌声が、そんな未熟で勝手な若い感情を表現しているように思えてきます。

この歌の主人公が若いとはどこにも書いておらず、それこそ木曜の夜のような微妙な年齢なのかもしれません。むしろ、会いたい人はどこにもいない、とわかっていてもふと思い出してしまう、そんな歳をとってもいつまでも残る気持ちを歌った曲なのかもしれません。

2010年9月 5日 (日)

「You don't know」

サビ以外の部分が非常にひそひそと語られるので、何を言っているのはよくわからないのですが、何を言いたいかはとてもよく解る。でも、解ったところでどうしようもない。そんなどうしようもない部分をどうしようもなく叫ぶ、意義があってもなくても、ただ止め処無い気持ちをひたすらに歌う曲なのだと思います。

落ち込んでいくところに一種の快感がある曲で、「気付きもしない」、「値打ちがない」、と自分から重りを抱くようにして絶望の淵に潜り込んでいく様は、決して素晴らしいものでも、誉められたものではないと思いますが、やはりその身投げするような激しい感情の振幅とそれに伴う甘美な陶酔感には心を揺さぶられるものがあると思います。特に「You don't know」の部分は虚空に向かって大声を出す感覚、はるかに、どんなに、呼びかけても絶対に届くことが無い、という巨大な切なさとある種の安心感の中で思う存分に泣き叫び、陶酔感が絶頂に達する瞬間だと思います。

自己を卑下する、そんな自分に酔う。と、言えば確かにそんな部分もある曲だと思いますが、それはやはり好きと言う気持ちの裏返しであって、そういう意味ではネガティブであっても虚無的ではなく、むしろ意外な程に情熱的な曲だと思います。例え気付かれないとしても自分の内に留めていられない、溢れるようにこぼれる愛を歌っているのだと思います

2010年8月29日 (日)

「愛情物語」

喉だけで歌っているような不思議な歌声と、突き放しているような独占欲が強いような屈折した愛情、ハードな曲調ながらもヒステリックな雰囲気もあり、裏も表もないようで、それでいて解釈が難しい、感想を書き難い曲です。

何だか事情がありそうな、一種の自己犠牲的な愛情をドラマチックに描いている、とも解釈できますが、その事情には触れられないため、聴く方としては想像するしかない、或いはリスナーの想像を膨らますような構成にすることにより、リスナーがいやがうえでもドラマを感じ盛り上がる、そういう性質の曲であるようにも思います。
しかし、筆者はややついていかなかった、とでも言うか、その物語をありありとは想像できなかったため、何だか一生懸命語ってくれているんだが、しかし悪いんだけど何べん聞いても頭に入らない、そんな人の話を聞き流しているような少し空々しい感覚になってしまいました。

タイトルにあるような物語を感じることができるか、それによって大分感想が変わってきそうな曲だと思います。

2010年8月22日 (日)

「私たちは春の中で」

こんなへヴィーな春があったものなのかと、題名からして穏やかな曲調を想像していた筆者は不意のボディー打ちをくらったような重苦しい気分になりました。
反復する言葉とリズムが、繰り返し繰り返し後悔をしているようで、聴く者のボディーを連打するような、じわじわとダメージを蓄積させていくことに重きを置いた曲のつくりをしていると思います。

平俗に解釈するならば、春の浮かれた雰囲気の中で孤独だった私は、自分ばかりが淋しい者である気がして、苛立って焦ってあやまちをおかしてしまい、色々なものを失ってしまった、今も後悔している、という話が時間の経過とともに描かれているように思います。
「春はあやまちのみなもと」という独特の言い回しのもと、全ては春が悪いかのような、春さえなければこんな気持ちにならなかったのに、と言わんばかりのネガティブな感情が並べられますが、微妙に春を待ち望んでいたような、そして通り過ぎてしまった春を惜しんでいるかのような、そういう春を肯定するニュアンスも含んでいると思うのは筆者だけでしょうか。
この曲における春とは不可抗力な何かであり、時代とかあるいは生命だとか大いなるものの象徴であり、単に悪者としては描かれないのだと思います。そして、春の中であがきつつ、悪戦苦闘しつつ、何かを手に入れ、そしてまた失う、そんな私達にスポットを当てた曲なのだと思います。

良くも悪くも何者かが蠢きだす、そんな春の怖ろしい一面も含めて私達の生き様を描いた、独特の視点とリズムを持ったユニークな曲だと思います。

2010年8月15日 (日)

「清流」

琉球風の伴奏に乗って、穏やかな歌声で歌われるこの曲はピースフルと言えば確かにそうで、些細なケンカから国家間の戦争まで、あらゆる愚かで無駄な争いを根源から否定する平和主義の歌、ともとれますが(たまたま終戦記念日に聞いたから余計そう聞こえたのかも)、筆者は「男と女は敵じゃないわ」とはっきり言っていることから、文字通り争うようにして離れることもない、一対の男女を歌った曲なのではないかと思います。

中島みゆきが歌う男女は痛快なほど分離独立している風に聞こえる曲もありますが、それを主題とした曲は、決して分かりあえない異質な存在でありながら、互いに必要としていて不可分である、そんな風に描かれることが多いような気がします。
この曲も男女とは源流で既に交わりあっているもの、元々が一つのもので、途中で分かれたとしてもまたいつかは一つになるものであって、だから、争ったり、支配したりする必要などない、と言っていると思います。或いは疑心暗鬼に陥りそうな自分自身をなだめているようでもあり、荒んだ心を潤す清流のような曲なのだと思います。

裏を返せば、時には濁った心で支配や暴力に走ることは有りうる、と言っているのかもしれず、むしろ眼前にそういう光景があるときに歌われる曲なのかもしれません。そういう意味では穏やかさとは裏腹に濁ることも分かれることも覚悟しつつ、なおも清き流れを信じる強さを持った歌のようにも思います。

2010年8月 8日 (日)

「命の別名」

やや強すぎるように思えた歌声も繰り返し聴くうちにこの歌に相応しいものに思えてきます。人の何気ない深い悲しみ、誰もが持つような当たり前のもので、そのくせ正体不明で厄介な気持ち、そういうものを歌わせたら、この人の右に出る者はいないような気がします。

この曲で言う命とは生命体、という意味ではなく、もっと人間的で高次のものだと思うのですが、かといって形而上のことを歌っているわけでもなく、人間なら誰もが持つ普通の感情、或いは平凡で等身大の人間そのものを指しているかと思います。
「悲しみを照らせ」とは悲しみをかき消してくれ、という意味とも解釈できますが、むしろ悲しみから目をそらさず、はっきりと見よ、という意味だと思います。
つまりこの歌は、名があろうがなかろうが、どんな人でも悲しみが襲ってくるのだから、過ちがあるのだから、それから免れることはないのだから、それから逃げるな、恐れるな、と励ます歌だと思うのです。

と、解説っぽいことを書いてみましたが、正直に書けば、またも声の迫力に押されて、「命に付く名前を「心」と呼ぶ」というフレーズに何がなんだかわからぬまま納得してしまった、というのが本当で、とにかくそんな説得力を持った心強い曲なのだと思います。

2010年8月 1日 (日)

「下町の上、山の手の下」

とにかくダミ声に圧倒されて、ストーリーが頭に入らない、といった感じですが、歌詞を読んでみるとラブストーリーのようでもあり、それを語るにもっともそぐわない声色を使うあたり、異色と呼ぶに相応しい曲だと思います。

あるいはこれは威勢が良くて品が無い、そういう下町的イメージの表現であって、似合わない声色でラブストーリーをがなりたてることで、不似合いな恋、ミスマッチな二人、そんな曲のテーマを表している、と深読みすることもできます。
が、ストーリーは盛り上がりどころがわからぬまま終わり、そのわりに中島みゆきはノリノリな感じで、置いてきぼりをくらったような、疑問符が辺りを飛んでいるような気分にさせられました。
結局これは表現がどうこうというより、中島みゆきがこういう曲をやってみたかった、こんな声を出してみたかっただけではないか、という気がするのですが、そう思えばこのノリも中島みゆきのビートの一つであって、たまたま筆者にはついてけないノリであった、ということがいえるのではないかと思います。

蛇足を加えるなら、この曲は下町でも山の手でもなくて、もっと田舎の自然豊かな、言ってしまえば北海道的なロック調の曲であって、微妙に間が延びたリズムとメロディーがますますこの歌を謎な雰囲気の曲にしてると思います。
あちこちに不思議の感がある、異色の歌だと思います。

2010年7月25日 (日)

「私の子供になりなさい」

「私の子供になりなさい」という衝撃的とも究極的とも言えそうなフレーズを持つ歌ですが、全体としては呟くような低い調子で歌われ、サビでも盛り上がりすぎることなく、むしろ子供になりたいのはあなたの方ではないか、と言いたくなるような仄暗い倦怠感に包まれいます。

母の愛情は最も強いものかもしれませんが、ここでいう「私の子供になりなさい」はあなたのお母さんのようにあなたを愛したい、という意味ではなくて、もっと素朴な意味での愛で、「だまって抱いていよう」、「いつまでも抱いていよう」と言っているように、もたれかかるような愛、肌で触れて安心する愛、そういう原始的な愛のことのような気がします。
私が大人であなたが子供、という大小関係がある歌ではなくて、もっと真横にいる対等な関係、或いは互いに依存し合うような、傷を舐めあうような、そういう疲れきったときに求めるものを歌った曲なのだと思います。でなければ、「私の子供になりなさい」という言葉があまりにも強すぎて、泣きそうな人にかける言葉としては傲慢の域に行ってしまうと思います。

アルバムタイトルにもなっていますが、暗いトーンの曲にも関わらず、かなり印象的な曲でした。この印象がこのまま続くのか、それともどこかでひっくり返されるのか、楽しみにしつつ、感想を続けたいと思います。

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