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2008年8月17日 (日)

「白鳥の歌が聴こえる」

軽やかな前奏とは裏腹に、ため息まじりのような沈んだ歌声が聞こえてきます。
筆者の解釈では(まんまかもしれませんが)、この歌は船乗り相手に商売する女の歌で、刹那の愛と永劫に続くような不安をきわめて心象的に描いた曲だと思います。

「YOSORO」は本来、船乗りの掛け声なので威勢が良いはずですが、この曲では陰鬱な雰囲気さえ漂わせています。それはあたかも古代の呪言のように言葉の意味は失われており、そのリズムと音階だけが鳴り響き、理性や論理の世界を離れて感覚と感情の世界へいざなうようです。その響きには肉体的な歓びも含まれているような気がします。しかし、決して陽気なものではなく、むしろそれにうんざりしている、虚しさを感じている風に聴こえます。
それが「たぶん笑っているよ」という、自分と相手をもろともに嘲笑しながらも、それすらどうでもいいような虚無的な心象風景に繋がっていくのだと思います。

船乗りはおそらく何も引きずることなく港を去っていくと思うのですが、女には再び永い時間が訪れます。そういう不安や恨み、虚しさが一瞬の「白鳥の歌」の間に明滅する、そんな走馬灯のような曲だと思いました。

2008年8月10日 (日)

「見返り美人」

「見返り」美人というと、何となく和風のしっとりとした美人、というイメージですが、この歌はコードもリズムも変則的で、なんだかちぐはぐで、それでいて妙な迫力がある、ちょっとシュールな曲だと思います。

「見返り美人」の意味は、過去を振り返っているとか、見返す、という意味だとか、体の向かう方向と心の向く方向が違うとか、色々考えられますが、そういう詩の解釈を考えさせられるというよりは、迫り来るような音のプレッシャーと「美人」という言葉の威力があいまって生まれる、得体のしれない迫力が印象的で特徴的な曲だと思います。

2008年8月 3日 (日)

「HALF」

一方的な思い込みが激しい曲は今までもありましたが、これほど露骨で独断的な曲は初めてです。しかも「遠い昔」も「流れていく時」も殆ど話が省略されて、いきなり「次に生まれてくるときは-」が出てくるので「何言ってんだ、この人」というのが正直な第一印象です。

次に生まれて来る時は、という表現はそれだけの想いの強さを表す言葉ではありますが、裏を返せば今生きている間には無理である、という諦めも含んでおり、言ってしまえばその想いだけしか持ち合わせていない、それを実現できるような見込みは何も無い、という状態であるといえます。
しかもこの曲は、二人で次に生まれて来る時はまためぐり会おうね、と言っているのではなく、一人だけで言っている、さらにそれは今と次の世だけではなく、遠い彼方の日から約束であると、一人だけで言っているのであって、遠い過去から遥か未来までを貫く強力な情念、それも成就されない一人だけの想い、その片思いのみを歌っているように思います。

つまり現実的にはあり得ないことは分かっている、それでも、私はあなたが好きなんだ、あなたがどう思っているにせよ、とにかく私はあなたが好きなんだ、という想いそれだけを壮絶に歌っている曲だと筆者は思います。

2008年7月27日 (日)

「やまねこ」

前曲は何だったんだ、と思うほど騒がしく、落ち着かない感じの曲です。

中島みゆきの曲にしばしば登場する攻撃的で、従順でなくて、敏捷で敏感で、それでいて打たれ弱くて脆い女性像は成る程やまねこと言い得て妙だと思います。
でも、ヤマネコは自分の爪が相手を傷つける、なんて自省はしないだろうし、第一ネコ科の爪って出し入れ自在じゃなかったっけ?なんて(自分の感想に自分で)ケチを考えてみましたが、多分この曲はヤマネコにもなりきれず、イエネコにもなりきれずの辛さ、人を傷つけてしまう、そして人を傷つけた自分を嫌悪してしまう、という苦しみを歌っているのだと思います。

中島みゆきはこういう世の中に適さない人がそれでもよたよたと、時には激しく生きていく様子を歌っていることが多いと思います。
それは露骨な励ましや同情ではないながらも、一種愛情ある視線であって、時に人を元気づけたり、慰めたりするものではないかと思います。

2008年7月20日 (日)

「シーサイド・コーポラス」

これまでの流れを無視して、もしくは一息入れるかのように、静かでのどかな感じ。
どことなく都会の喧騒めいていたこれまでの曲と比べて、ど田舎の静けさと寂しさがずいぶん心地よく感じられます。

このギャップを深読みするならば、都会暮らしに疲れた人の隠遁願望や故郷への回帰を示唆していると思えます。かといって田舎礼賛、というわけでもなくどことなく田舎暮らしをも否定しているようにも受け取れます。
ずっとここにはいられないような、好き好んで田舎を飛び出したような、それなのにふと戻りたくなる時がある、そういう複雑な感情が短い詩にこめられていると思います。

これまでの流れというものを考えなかったとしても、この曲の光景は安住の地のような穏やかさと幻のような儚さが共存しており、中島みゆきの田舎感が凝縮されている、そんな歌ではないかと思います。

2008年7月13日 (日)

「毒をんな」

愛も希望も無いような、少しだけ愛があるような、やっぱりそれも無いような、感想を言うことすら難しい、なんともいえない曲だと思います。

助けて、助けて、と繰り返した挙句「あんたには何も期待していない」と突き放し、何もかもあきらめているようで、かといって全く気が楽にもなっていない。歌っている方も聴いている方も身悶えするような苦しさがあります。
一方で気分屋の戯れ言に過ぎないようにも思えます。そう思って聴いてみると「ここから出よう」なんていう男も実は存在せず、頭の中で希望をつくりだしては自らそれを否定している、そういう虚しい心の遊びを描いているようにも思えてきます。

なんて感想を持つのは筆者がひねくれているだけかもしれませんが、多分この歌に対する回答というものは無くて、一つの心の在りようをただ吐き出している歌であると思います。

2008年7月 6日 (日)

「F.O.」

男女のすれ違い、ではなくて凌ぎあいを描いた曲で、しのいでしのいで行き着く先がフェイドアウトかカットアウトかわかりませんが、恋が冷め切っていることは確かで、聴いてて辛いような感があります。

「フェイドアウトしたい」という男の望みのもかなり身勝手で酷い話だと思いますが、この歌ではそういう望みに振り回されるか弱い女が主人公ではなくて、そうはさせじとあれこれ手を打って、逆に男のほうが追い詰められている様子が感じられます。
男がロマンチストで、女が現実的、というのはよく言われる論ですが、この曲のサビは追い詰められた男側の悲鳴のようなもので、男女の性質の違いが主題ではなく、やはり男女のせめぎあいを描いた歌だと思います。

どちらにせよ、この先に幸せは待ってはいなさそうです。もしかしたら恋が愛にかわるかも、なんてそんな伏線はどこにもはってなく、げに恐ろしい冷めた恋の歌だと思います。

2008年6月29日 (日)

「最悪」

中島みゆきのロック調の曲は素直にかっこいいと言えない、というか、素直に言ってかっこよくはない。
なんて言い切れるほどたくさん曲を聴いてはいないのですが、少なくとも筆者が今まで聴いた範囲では中島みゆきのロック調の曲にはロックのような鋭利な切断面が無くて、むしろ形態不安定ではっきりとしなくて、例えサビをシャウトしたり、声に少しドスを効かせて「最悪だ」と男っぽく言い切っても、およそロックとはかけ離れた湿っぽさがあるように思います。

勿論ロックといっても様々で、中にはやたらと情緒的で涙をダラダラ流しながら歌っているようなロックだってあるわけですが、それらとも一線を画す中島みゆきの独自の暑さがあるような気がします。
それはラジオのスイッチがつけっ放しだったり、ギターを抱き寄せたり、独り酔っ払った挙句「最悪だ」と言うようなもので、内省であって、苛立ちであって、内側に篭るような熱が高まって、延々と自分を苛ますような様である思います。

中島みゆきは「熱さ」ではなくて「暑さ」であって、ロックが炎ならば、中島みゆきはスチームのようなものだ、と何だかわかったようなわからんようなことを書いて、結論の代わりにしたいと思います。

2008年6月22日 (日)

「あたいの夏休み」

じめっとしたような何だかすっきりしない、せっかくの休みなのに晴れやかではなく、混沌とした感情が蠢いてるような感じ。「Summer Vacation」というサビにも関わらず、やはり「夏休み」と呼ぶにふさわしい、日本的な情念が篭った曲だと思います。

これまでは悲しみの淵から始まるような一曲目が多かったように思いますが、この曲はどこか挑発的で攻撃的で、全く爽やかではないもののこれまでに無いようなある種の思い切りが感じられます。盗賊さんのTBで触れられているように「ご乱心の時代」(が、どんな時期なのか不明瞭なようですが)であって、新しいスタイルを模索しているように感じられました。

「36.5℃」というアルバムタイトルは当然体温、人肌を指す言葉であり、この曲のようにどこか生ぬるくて不快でもあり、それでいて良く言えば温もりであって、人恋しさを感じさせるような曲が続くのではないか、と当てにならない予想をしつつ、このアルバムの全曲感想も試みてみようと思います。

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